初心者の方にもわかりやすいように、フォーマルやセミフォーマル、普段のおでかけなど、シチュエーションに合わせた着物の選び方をお伝えします。
着物の選び方は、シチュエーションで変わります。
冠婚葬祭や式典といった格式が高いフォーマルな場面から、仲間内のお出かけなど、場所や人によって着るべき着物が違うため、事前にこちらの記事を参考にしてチェックしておきましょう!
着物の選び方
着物の選び方、その最大のポイントは「シチュエーション」です。着物は結婚式や式典、お子さんの七五三や入学式、あるいはお茶会やパーティーなど、シチュエーションによって着用できる着物や帯のタイプが異なるからです。
着物|シチュエーションに合わせて選ぼう!
シチュエーションによる着物選びのポイントは、「誰のために着る着物か」を意識することです。冠婚葬祭、特に結婚式などでは、お祝いする相手やイベントの情報を考慮しつつ、ルールに沿った選択が求められます。
また、着物は紋の数によって「格」が変わります。フォーマルな席に出席する場合は、着物選びとともに紋の数や着物の格を確認しておきましょう。
※紋について
通常、礼装の着物には紋がついています。主に家紋が用いられますが、地方によっては女性の実家の紋を受け継ぐこともあります。
一つ紋から五つ紋まであり、紋の数が増えるごとに着物の格が高くなっていきます。
また、紋にもそれぞれ「染め」、「摺り込み」、「刺繍」などの種類と格があり、その中でも「染め」が最も格が高いとされています。
結婚式や式典などフォーマルな場面では、第一礼装の五つ紋に「染め抜き日向紋」を使用します。
カジュアルな場面では「しゃれ紋」と呼ばれる、家紋以外の草花や干支をアレンジした飾り紋をつけることもあります。
格式高いフォーマルな着物
冠婚葬祭や式典など、フォーマルな場面では第一礼装で出席します。
・レディースの場合…既婚女性は黒留袖、未婚女性は振袖が格式の高い第一礼装です。黒留袖、振袖共に、衿元には「比翼仕立て」と呼ばれる重ね衿がついています。
・メンズの場合…黒紋付・羽織・袴が第一礼装です。
また、フォーマルな場面では、小物類も白で統一します。基本的にレディース、メンズ共に、半衿や足袋は白を着用します。
セミフォーマルな着物
セミフォーマルの場合は準礼装、略礼装が用いられます。
・レディースの場合…留め袖よりもやや気軽に、汎用性が高く着回せるのが、色無地や江戸小紋、訪問着、付下げなどです。
準礼装、略礼装の着物は、帯や半衿など、小物を工夫すればカジュアルに、紋を入れればセミフォーマルとして利用することができるため、一着持っていると便利です。
・メンズの場合…羽織と着物・袴が準礼装スタイルで、結婚式の出席には五つ紋、その他は一つ紋のお召の着物が主流です。
カジュアルな着物
カジュアル着物は使用される素材もデザインも多種多様で、帯や小物の合わせ方次第で、さまざまな場面で活用できます。
色や柄を自分好みにあわせられる、趣味の着物です。
レディースの場合…カジュアルな場面はお召や小紋、紬などです。帯は名古屋帯や半幅帯を合わせます。
メンズの場合…袴はつけず、着流しや袖なしの羽織を着用します。
浴衣は夏のカジュアルファッションとして、男女ともに人気があります。
帯|使うシーンによって選んでみよう!
袋帯(ふくろおび)
袋帯は主に結婚式や式典などで着用します。金糸や銀糸で織り上げられた袋帯は、フォーマルなシーンで使います。袋状に織られるため、この名前がつけられました。
模様が帯全体に入っているものを「全通」、柄が六割ほどのものは「六通」と呼ばれています。
サイズは長さ4m30cm程度、幅が30cmほどで、「二重太鼓」と呼ばれる結び方が一般的です。
また、振袖で使用する場合は、「ふくら雀」や「立て矢結び」など、より華やかな結び方で結ばれます。
名古屋帯(なごやおび)
名古屋帯は主にカジュアルな場面で使われる帯です。サイズは長さ3m60cm程度、幅が30cmほどで、「一重太鼓」と呼ばれる結び方が一般的です。
しかし、金糸や銀糸を使用した豪華な名古屋帯は、色留袖や付下げなどと合わせて、セミフォーマルとして利用できます。
半幅帯(はんはばおび)
半幅帯は、主に浴衣やカジュアルな着物にあわせる帯です。半幅帯は、幅が他の帯の半分、15cm程度なのが特徴です。
基本となる結び方は「文庫結び」や「矢の字」など、シンプルなものですが、最近では華やかな「変わり結び」が好まれるため、それにあわせて半幅帯のサイズも長くなっています。
【結婚式向け】おすすめな着物のタイプは?
結婚式は着物を着る機会の多い場面です。新郎新婦の家族や仲人は黒留袖や振袖を着用します。また、結婚式に招かれる場合は、訪問着などフォーマルな着物選びが必須です。
お祝いの席ですので、結婚式では華やかな着物が好まれますが、花嫁の衣装よりも豪華な装いにならないよう、着物選びには配慮が必要です。
色留袖
色留袖は、黒留袖に次ぐ準礼装です。未婚・既婚女性ともに着用でき、結婚式以外にも、式典やパーティーにも使えます。こちらも紋の数によって着物の格が変わり、五つ紋だと、黒留袖と同格として使用できます。
新郎新婦の家族として結婚式に出席するのならば、五つ紋の色留袖、親戚の場合は三つ紋以下を着用します。
振袖
未婚女性の第一礼装である振袖は、結婚式以外にも式典や初詣などで着用します。袖の長さによって大振袖、中振袖、小振袖があり、結婚式では花嫁とかぶらないように、大振袖は避けます。
振袖は、重ね衿や豪華な結び方の帯締め、幅の広いちりめんの帯揚げなど、通常の着物よりも豪華な装いで、親族側、招待される側の両方で着用できる礼装です。また、最近では卒業式の袴姿に振袖をあわせるスタイルも人気があります。
華やかなデザインの訪問着
訪問着は、着物全体に模様がつながるように描かれた着物の総称です。一つ紋をつければ礼装として、親族の結婚式などに着用します。
また、紋がない場合でも、訪問着は略礼装として使用できるので、友人や知人の結婚式に出席することも可能です。
【入学式・七五三向け】おすすめな着物のタイプは?
保護者の方が、お子さんの入学式や七五三で着物を着る時のポイントは「主役はお子さん」ということを意識した着物選びです。こうした場合、保護者の方はお子さんの衣装よりも格が下の着物を選びます。
一般的に七五三では、お子さんが振袖や紋付袴などの第一礼装を着用しますので、保護者の方は一段格を下げたシンプルな付下げや色無地を選びます。
また、入学式や卒園式でも、主役はお子さんですので、保護者の方は派手な色や柄を避け、シンプルなデザインの着物を選びましょう。
付下げ
付下げは訪問着と同じく略礼装の着物で、訪問着と違うのは柄の入り方です。訪問着が着物全体に模様が入るのに対して、付下げは衿の部分には模様が入りません。また、付下げの模様は肩山から柄が上向きに配置されています。
訪問着に比べて色や柄はやや控えめでなものが多いのが特徴です。
また、付下げの中には「付下げ訪問着」など、訪問着と比べてもほとんど見分けがつかないような着物もありますので、その場合はシチュエーションに合った色やデザインを選んで下さい。
色無地
色無地は、一色で染められた柄のないシンプルな着物です。しかし、生地そのものに「地紋」と呼ばれる模様が織り込まれている場合は、一色でも華やかな印象があります。
一つ紋や三つ紋を入れれば略礼装として使うことができます。色無地はシンプルな着物ですので、その分、幅広い年代で着こなすことができるのです。
また、帯や小物を変えれば、式典からパーティーや趣味の集まりまで、さまざまな場面で着ることができます。
【普段着向け】おすすめな着物のタイプは?
買い物やコンサート、食事会など、ちょっとしたお出かけに使える普段づかいの着物はアレンジ次第でさまざまな場面で活用できます。
普段遣いの場合であれば、ルールにこだわらず自由に楽しめる趣味の着物として楽しむことができます。
また、こうした普段づかいの着物は、絹以外に木綿や化繊で作られることも多く、家で洗濯ができるため、気軽に着ることができます。
お召
お召は、小紋や紬の中間くらいの格をもち、気軽なよそゆき着として利用されます。また、一つ紋を入れれば略礼装としても使える着物です。
御召糸(おめしいと)と呼ばれる撚りのある糸で織り上げるため、生地の表面に「シボ」という細かい凸凹と、独特の光沢があるのが特徴です。
小紋
小紋は、生地全体に華麗な模様が染められた着物のことを言います。縞模様なども小紋の種類に入ります。観劇やコンサートなど、ちょっとしたお出かけに適しています。また、観光地でのレンタル着物としても人気の着物です。
ただし、小紋の中でも「江戸小紋」と呼ばれる細かい点が連続するデザインの着物は、他の小紋よりも格が高く、紋を入れれば略礼装として使用できます。
これは江戸時代、武士の礼装として使われていたため、現在でも江戸小紋は他の小紋の着物よりも格が高いとされています。
紬
紬は正規の絹糸にならない糸を紡いでつくる着物で、「織りの着物」の代表と言われています。普段着やおでかけ着として利用します。さまざまな産地で作られる紬ですが、中でも「大島紬」や「結城紬」などは高価なブランド紬として人気があります。
また、無地の紬には「しゃれ紋」をつけて、センスの良いおしゃれ着として利用できますし、一つ紋をつければ、正式なお茶会への出席も可能です。
浴衣
浴衣は、昔は「湯帷子(ゆかたびら)」といい、お風呂上がりに身につける裏地のない着物の総称でしたが、時代が下がるにつれて夏のお出かけ着として普及していきました。
お値段も手頃な浴衣は、他の着物よりも簡単に着付けられるのが特徴です。一般的に半幅帯や、柔らかい素材の兵児帯(へこおび)をあわせます。もともと、兵児帯は子供用でしたが、簡単に結べてアレンジが可能なため、大人用の兵児帯も増えています。
通常、浴衣は裸足に下駄で半衿がないスタイルですが、襦袢や足袋をあわせて夏の着物風にアレンジもできます。
花火大会やお祭りなど、夏のお出かけにぴったりの着物です。
まとめ
着物の選び方で大事なのは「誰のための着物か」ということです。冠婚葬祭や式典は「相手のため」であり、そうした場合、着物の格や、ルールにのっとった着物選びが重要です。
しかし、仲間内の気軽なお出かけや集まりであるなら、自分の好みで自由に選ぶのもありだと思います。
着物初心者の方で選び方に迷ったら、まずはどんな場面で着るのか、着物の種類は何がいいかを呉服店やレンタルショップに伝えて、相談してみましょう。