「明治屋のクリスマス飾り灯ともりて煌きらびやかなり粉雪降り出づ」
木下利玄が詠っている。日本でクリスマスという文化が定着し出したのは明治の頃だという。12月、街が慌ただしくなり煌びやかになっていく。
日本は世界的にも珍しい、四季を楽しめる国。
その四季を取り入れて、おしゃれを楽しむのが着物。
着物文化には『先取り』という概念があって、ひとつき前からそのイベントを取り入れたコーディネートを楽しむのが主流。
クリスマスツリーを出す時期になったら、着物にも取り入れる。
「それっぽ」ければ、それでいい。
例えばクリスマスシーズンのアフタヌーンティーなら『ピンクでふわふわ』とか。
四季を取り入れる、と言っても手持ちの小物類や着物、帯などの兼ね合いもあるので毎回ドンピシャなコーディネートを組むのは難しい。
私がいつもやっているのは、
・季節の色と概念を取り入れる
・半幅帯や小物で楽しむ
この二つ。
これは色味だけを取り入れたクリスマス概念コーデ。
着物や帯の大物で「クリスマス柄」とか「ハロウィン柄」もすごく可愛い。
湯水のようにお金が湧いて出るなら欲しい。
だが、そんなことは言っていられない。
と言うことで手軽に取り入れられる半幅帯や半衿・帯留などの小物で楽しむのがおすすめ。
半衿、半幅帯、帯留にイベント感を盛り込んで、色味でまとめる。
着物は総絞りで伝統的な良さがありつつも今どきさもある、心が躍るコーディネート。
デニム着物やジャージ着物を合わせても可愛い。
小物に関しては作家さんがフリマサイトやハンドメイドサイトで可愛いものをお手頃価格で出しているので是非リサーチしてみて欲しい。
さて、そんな私はこのエッセイ執筆にあたりネタ作りのために一年ぶりに着物を着るようになった。
こんな事をいうとがっかりするかもしれないが、20歳から着物業界にいる私にとって着物は『戦闘服』で『仕事着』である。
もちろん好きでなければ続かないのは大前提で、好きな着物を着れば気分は上がり背筋が伸びる。
ただ好きなもの、好きな色合いだけ着ていれば偏りが出るためSNS投稿のために色々着ている、という話。
私自身は振袖専門店の現場に立っていて基本的にはスーツだが、最近着物で出勤する日を作り始めた。
同僚から好評な傍ら、気遣いをもらうこともあるのだが前述したように私にとって着物は『仕事着』なので、着物で段ボール運びも余裕である。(汚れそうだと分かっている日にわざわざ着ていくことはしないが。)
洋服に比べたら高級品で、汚したくない、傷めたくない、その気持ちが無いわけではないが、あくまでも着物は『普段着』。
着る場所や機会を窺ってしまい込むよりも、多少汚れようがたくさん袖を通す方がよくない?
気兼ねなく着倒して、元を取る。
洋服でも和服でも、変わらない仕事ができるのなら好きに着たらいい。
私の場合は着物でも違和感のない職種だが、私服通勤の会社やリモートワークで着物生活も素敵だと思う。
もちろん仕事に限らず、どこへ行くにも好きに着たらいい。飲みにも行くよ。
普段着物は補正だってシビアになる必要はない。着ていて苦しくなるような着付けはしない。
私の着物に対する基本的な考え方はそんな感じ。
これから年を越し、成人式シーズンに突入する。世の中は華やかな一日になり、私は一年に一度、そして当事者のお嬢様方は人生に一度の大舞台。
師走らしく駆け抜けて、想い出に残る素敵な1日になるよう気を引き締めて向かっていく。
皆様、良いお年をお迎えください。
碧井 あんり(@anp_kimono)
神奈川県出身。歌舞伎役者の叔父と祖母に影響を受け、20歳未経験で着物業界に飛び込む
。着物専門店で呉服全般の経験を積み管理職を務めたのち着物専門ライター・SNSディレ
クターとして活動。現在は神奈川県の振袖専門店で現場に立ち、成人式という人生に一度の
節目に携わっている。
好きなものは、アイドル「嵐」とお酒とカラオケ。
一張羅の着物は、前田仁仙の型染小紋。