着物コートとは。羽織とはどう違うのか。どんな時に使うと便利なのか。
こちらの記事では、着物コートについてあまり知らない、どんな着物コートを選んだらいいかわからない、そんな方向けに着物コートの種類や機能、着用のメリットについて、わかりやすく解説していきます。
着物コートとは?
着物コートとは、着物や羽織の上に着る和装用のコートのことです。
一般的に冬に着る印象が強い着物コートですが、着用できる時期は意外に長く、秋から春まで使用できます。
きものコートとは、具体的にどんな機能や種類があるのかをご紹介いたします。
防寒と汚れを防ぐためのアウター
着物コートには主に「防寒」と「汚れを防ぐ」という2つの役割があります。
洋服のコートと同じく、着物コートは防寒の役割をもちつつ、ほこりや汚れから着物を守る役割があります。
着物や羽織の上から着用しますが、着物コートには用途に応じてかたちや色などにルールがありますので、ご自分の用途にあわせた着物コートを選ぶことが大切です。
着物コートの着用時期
通常の着用時期のほかにも、気温の変化や状況によっても変わりますので、お出かけの際は前もってコートの着用ルールを確認しておきましょう。
紅葉の頃から桜の時期まで
一般的に着物コートの着用時期は「紅葉が色づく頃から、桜が満開になるまで」と言われています。
なぜそう言われていたのかというと、春や秋には風や汚れから着物を守り、冬は寒さを防いでくれるからです。
しかし、現在でも夏に着物コートを着用する場合があるように、実は昔も夏の時期でも着用する風習があったのです。
着物コートの由来
着物コートの由来についてご説明します。
帯姿を隠す目的
もともと着物コートは「帯付き」とよばれ、着物と帯だけの姿を隠す目的でつくられました。
昔の習慣では、帯が直接見える状態で外出するのは「はしたない」とされていたからです。
旅・外出用として
着物コートは以前、旅行用や外出着として使用されていました。
「道中着」とよばれる着物コートは旅行用の上着として着用することから、「道行コート」の「道行」にも旅という意味があります。
着物コートを着るメリット
着物コートを着用すれば、便利で快適な着物のおでかけが楽しめます。
着付けを隠す
着物コートがあれば帯結びや着付けの失敗を隠して外出できます。
着付けや帯の結び方がイマイチな時、着物コートで隠せば気になりません。
それまでの着崩れ隠しとしてもおすすめです。
汚れを防ぐ
着物コートには、ほこりや塵などから着物を守る役目があります。
風の強い時や、人の多い場所では、着物や帯に汚れがつくこともあるため、丈の長い着物コートがあると安心です。
防寒
冬の寒い時期は、着物コートを着て寒さを防ぎます。
冷たい空気が入り込みやすい袖や衿部分にコートを重ねることで、保温性を高めることができるのです。
防水
撥水加工の素材を使った雨コートは、着物用のレインコートとして雨を防ぎます。
特に振り袖や訪問着といった絹素材のフォーマルな着物は雨に弱いので、雨コートがあると安心です。
着物コートの種類・特徴
着物コートには用途やお出かけの目的に応じて、さまざまな種類があります。
冬用防寒コート
防寒用の着物コートには、着物風なデザインから、洋服風のポンチョやケープといったものまで多様なデザインがあります。
ポンチョやケープ型の着物コートは洋服とも兼用できて便利です。
道行コート
絹素材の道行コートは主にフォーマルで着用します。
衿の形が四角形になっているのが特徴で、前についているボタンで留めます。
素材や柄によってはカジュアルでも使用できます。
雨コート
雨コートは、着物用のレインコートです。
撥水加工を施したナイロン素材などで作られ、裾までの長さがあるものと、上下2部式になっているものがあります。
大事な着物を水から守ってくれるため、雨の日には必要不可欠なコートです。
道中着
着物と同じ衿あわせで作られているコートです。
紐で結んで着るので、サイズの調整がしやすいのが特徴です。
カジュアルな場面で着用します。
薄物コート
主に春や夏に着用する薄手のコートです。
通気性の良い透ける素材でつくられるほか、近ごろではレース仕立てのコートも人気があります。
通気性のよい薄物コートは、夏の冷房対策やファッションとしても使用できます。
着物コートの格
着物と同じく、着物コートにも「格」があります。
色や柄、素材や衿の形によって「格」が違いますので、行き先や用途にあわせた着物コートを選びましょう。
色
一般的に、黒が格の高いコートの色と言われています。
これは、留袖や喪服など冠婚葬祭で着用するフォーマルな着物の色に黒が多いためです。
黒はどんな着物にもあわせやすく、汚れが目立たないというメリットもあります。
柄
格の高い柄の順番は以下の通りです。
1.無地
2.絵羽模様(柄が一枚の絵のようにつながった模様)
3.小紋や絣など
無地や絵羽模様は冠婚葬祭用、小紋や絣はカジュアル用に着用されます。
素材
着物コートの素材を格の高い順にご紹介します。
1.絹(ちりめん)
2.ベルベット
3.ウール、木綿、紬
最も格が高いものは絹(ちりめん)で、主に振り袖や留袖などの礼装とあわせます。
ベルベットはフォーマル、カジュアルのどちらにも着用可能で、ウールや木綿、ポリエステルはカジュアル向けの素材です。
衿のかたち
色や柄、素材のほか、衿のかたちでも着物コートの「格」が決まります。
衿のかたちを確認した上で、目的にあったコートを選びましょう。
道行衿
衿が四角い衿のかたちをしているのが道行衿です。
このタイプの衿の着物コートは、主にフォーマルな場面で着用しますが、絹以外の素材や柄によっては、カジュアルでも着用が可能です。
衿のかたちから、別名「角衿」とも呼ばれています*
都衿
都衿は、道行衿の角部分に丸みがついた衿のことです。
丸みがついているため道行衿よりもやわらかい印象があります。
都衿のコートは、フォーマルでもカジュアルでも着用できますので汎用性が高く、一枚もっていると重宝します。
千代田衿
千代田衿は、着物の衿と洋服のコートの衿をミックスしたようなデザインです。
胸元へ向けて斜めに衿が作られているため、胸元にスッキリとした印象があります。
フォーマルな道行衿のコートと違い、千代田衿のコートはカジュアルな着物と合わせて着用します。
被布衿
被布衿は道行衿のような四角い衿の横に、丸みのある衿を重ねています。
七五三で三歳の女の子が着用するコートが被布衿です。
被布衿のコートには、飾り紐やボタンが装飾されています。
被布衿はセミフォーマルから、カジュアルな場面まで幅広く使えます。
着物衿
着物衿は、文字通り着物の衿のように長い衿を斜めに重ねたかたちです。
外側の紐を結んで着用します。
着物とかたちが似ているので、着物をリメイクしてコートを作ることもあります。
最もカジュアルな着物衿のコートは、お出かけ着として気軽に着用できるのが魅力です。
着物コート以外のおすすめな防寒アイテム
着物コート以外に、冬の防寒におすすめなアイテムをご紹介します。
保温や発熱機能がある防寒アイテムは、着物特有の足元や首筋の寒さをカバーしてくれるので、着物コートと合わせるとより効果的です。
インナーを着用する
上半身は肌襦袢の下に保温性に優れたインナーを着用することで寒さを防ぎます。
薄くて軽いので着付けに影響しませんが、長袖のインナーは袖から見えてしまうことがあるので注意が必要です。
下半身は裾除けの下にレギンスを着用することで裾からの冷気を防ぎます。
「ヒートテック」を愛用しています*
マフラーを活用する
マフラーは着物の上からつけることで、首まわりや上半身を温めてくれます。
ファーのショールやストールなど、着物用のマフラーもありますが、カジュアルな場面なら洋服用のマフラーをあわせても大丈夫です。
足袋用インナーを着用する
足袋の中に履く薄手のインナーを着用することで、足先の寒さを防ぎます。
保温素材の足袋インナーは重ね着が可能ですので、足袋だけでなく、市販の靴下にもあわせてもいいでしょう。
ハイソックスタイプの足袋インナーなら、ふくらはぎまでカバーすることができて温かいです。
防寒草履を履く
防寒草履とは、草履の爪先部分にカバーのついた草履のことです。
足先を保護し、保温効果のある草履は、冬のおでかけにぴったりです。
また、防寒だけでなく雨や雪を防ぐといった役割もあります。
カバー部分が取り外し可能な草履なら、寒い時期以外には通常の草履として使うこともできて便利です。
カイロを利用する
着物の下からカイロを貼ることで、全身を温めることができます。
貼る場所は寒さを感じやすい背中の下・ふくらはぎの下、肩甲骨の間、おへその下などです。
着付け後にカイロを貼るのは難しいため、かならず着付けの前に貼ってください。
ほかにも、アームカバーなどを使用して手首のや腕の寒さを防ぐなど、さまざまな防寒対策がありますので、気候にあわせて選んでみてください。
羽織と着物コートとの違い
羽織と着物コートは、同じように着物の上から羽織りますが、デザインも用途も違うものです。
ここでは羽織と着物コートはどこが違うのか、どんな場面で着用するのかをご説明します。
見た目の違い
羽織と着物コートの違いを見た目やデザイン面から比べてみました。
羽織
羽織とは前部分が開いているデザインのアウターのことです。
羽織紐という専用の紐で前を留めます。
着物コートと違って正面から着物と帯姿が見えるため、着物や帯とあわせたコーディネートが楽しめます。
着物コート
羽織と違い、着物コートは衿や下阪神以外はすべて隠すデザインになっています。
これは、着物コートが防寒や埃よけの役割があるからです。
紐やスナップボタンで留めて着用します。
着用のマナー
羽織と着物コートのマナーに関する違いを比べてみました。
羽織
羽織は洋服に例えるとジャケットやカーディガンのような存在ですので、屋外、屋内どちらでも着用できます。
羽織を脱ぐことがマナーですので注意しましょう!
着物コート
アウターである着物コートは、室内では脱ぐのがマナーです。
コートを脱いだ時はきちんと畳んで風呂敷などにまとめておくと便利です。
まとめ
ここまで着物コートの由来や種類と特徴、羽織との違いなどをお伝えしてきましたが、着物コートの選びのポイントは、「どんな場所、目的で着物コートを使うか」で決まります。
目的別着物コートの使用例
・冠婚葬祭などフォーマルな場面…絹(ちりめん)の黒や絵羽模様の道行衿コート
・防寒用…ウールやベルベット素材の着物コート
・雨対策…ナイロン材の撥水コート
このように、使う場面にふさわしい「格」と機能を見極めて、自分にあった着物コートを選んでみて下さい。