日本三大友禅のひとつ「京友禅」についてわかりやすく解説します。
着物好きなら知っておきたい特徴や歴史・西陣織りとの違いも掲載。
さらに、日常で楽しむ方法を紹介しているのでぜひチェックしてみましょう。
京友禅とは
京友禅とはどのような技法なのか紹介していきます。
京都府で作られる染織品
京友禅(きょうゆうぜん)とは京都府で作られる染織品のことで、着物の生地となる布に直接色や模様をつけていく染色技法です。
友禅染は、もともと江戸時代に京都の扇面絵師である宮崎友禅斎によって考案された伝統的な技法で動物や植物・自然をモチーフにした模様が特徴です。
京友禅以外にも東京友禅、加賀友禅などがありますが地域によって違った魅力があり刺繍や金銀箔を使用した京友禅は世界的にも大変人気のある染織品として注目されています。
京友禅の特徴
京友禅の特徴について紹介していきます。
伝統伎が大集結
四季折々の模様をあしらった京友禅は伝統的な技法が多数使われています。
【手描き染】
最も古い技法で名前のとおり下絵から色刺しまでひとつひとつ手描きで作られます。
職人の高い技術が求められ一枚の着物の完成に1年以上かかることも。
【型染め】
型紙を使って染めていく「型染め」。
色ごとに複数枚の型紙が必要なため、1枚の着物に使われる型紙は数十枚から数百枚作成されます。
【機械捺染】
銅製のロールに彫刻が施された捺染型を使用し機械で模様染を行う技法。
捺染型の模様は専門業者に特注し図案通り染まるように型をセットします。
機械染とはいえ職人が細心のチェックがはらわれるため熟練の技がつまっています。
【デジタル染】
インクジェットプリンターを使って染められる技法。
パソコンのグラフィック上で色を挿していき花びらの一枚一枚は人の手によって描かれています。
プリント後は蒸し水洗いを経て金加工に移ります。
金銀を使用している
京友禅は加賀友禅や東京友禅と違い華やかな金銀を使用しているのが特徴です。
金箔やプラチナ箔を装飾する金加工は経験を積んだ職人にしかできない技術によって製造されるため高級な染織品として知られています。
金銀を施した派手な装飾はフォーマルなシーンからカジュアルなシーンまでさまざまな場面で着用できます。
古典柄を華やかにアレンジ
伝統工芸品として多くの人に知られている京友禅です。当時は古典柄を華やかにアレンジした流行のデザインとして話題になりました。
現在でもその華やかさが多くの人から愛され、ハレの日の格式高いシーンで着用する振袖で多く使われています。
古典柄をアレンジした京友禅は、着る人の個性や美しさを引き立て魅力を一層引き立てる洗練されたデザインと色使いです。
京友禅の歴史
京友禅の歴史についてみていきましょう。
京友禅のはじまり
京友禅は日本の伝統的な手工芸品であり、そのはじまりは平安時代に遡ります。
室町時代に発展した染色技術は江戸時代には独自の様式を確立し、主に絞り染めの技法を使用した美しい模様や色使いで知られています。
その歴史は長く、日本の芸術文化において重要な位置を占めています。
京友禅と西陣織の違い
京友禅・西陣織どちらも日本の伝統的な工芸品です。
では、2つの技法にはどのような違いがあるのか詳しく解説していきます。
「先染め」か「後染め」かがポイント
京友禅と西陣織の主な違いは、「先染め」と「後染め」の染色技法にあります。
京友禅は先染め技法を使用し、糸を染色する段階で模様を表現するのに対して、西陣織は後染め技法を用い、生地を織り上げた後に染色することで模様を生み出します。
この違いにより、京友禅は緻密で美しい柄が特徴であり、一方で西陣織は豊かな質感や風合いが魅力です。
日本三大友禅の特徴
日本三大友禅のそれぞれの特徴について解説していきます。
京友禅
京友禅は美しい古典柄のデザインが多く金銀糸や金銀箔を使った華やかさが特徴です。
金加工は技術力の高い職人が金粉や箔を装飾し各工程に専門の職人を配す完全分業制のため質の高い着物ができあがります。
多色使いの色鮮やかな京友禅はハレの日に着用する振袖や留袖、訪問着などの礼装にふさわしい染織物です。
産地 | 京都府 |
柄 | 花鳥風月、有職文様などの古典柄 |
色 | 多色使いの色彩。金銀糸を使った華やかさが特徴。 |
加賀友禅
加賀友禅は加賀色彩と言われる藍・臙脂、黄土、草、古代紫を基調とした落ち着きのある色合いです。
草花や鳥など自然がモチーフのデザインが多く、なかでも「花籠」は加賀友禅を代表する模様となっています。
加賀特有の技法「虫食い」は柄に立体感が生まれ、まるで現物を切り取ったかのような写実的な絵が多くの方に称賛されています。
産地 | 石川県金沢市 |
柄 | 写実的な草花模様 |
色 | 加賀五彩(藍・臙脂、黄土、草、古代紫) |
東京友禅(江戸友禅)
東京友禅は江戸時代の繁栄と都会的な雰囲気が反映された大胆で斬新なデザインが特徴的な染織品です。
余白部分が少なくシンプルな印象があり、京友禅や加賀友禅が色彩豊かな配色とは反対に白や藍色など渋めな色使いで仕上げられています。
また、東京友禅は町人文化の粋や詫びを波及したため「千鳥」「釣り船」「網干し」など江戸の風景をデザインしたものが多いのが特徴的です。
産地 | 東京都 |
柄 | 江戸解文様、御所解風文様、有職模様 |
色 | 藍や白を用いたさっぱりとした色 |
京友禅着用シーンを紹介
京友禅の着用シーンをご紹介します。
ハレの日にはぜひ、京友禅を着て出かけてみましょう。
お子様の成長の記念に~産着(初着)、七五三、成人式~
お子様が生まれると成長の記念に着物を着る機会が沢山あるので、産着や七五三・成人式にはぜひ、京友禅の着物を着て頂きたいです。
着物の中で最も格式の高い振袖は日本の伝統的な着物のひとつで、そのデザインや柄にはさまざまな意味が込められています。
美しいデザインと高度な職人技が融合した京友禅は、お子様の人生における節目にふさわしい装いです。
婚礼衣装~打掛、振袖~
京友禅の古き良き伝統と現代の美意識が調和した象徴は、婚礼衣装で着用される打掛や振袖は祝福を受ける者の気品を際立たせます。
刺繍や金糸が織りなす京友禅は、結婚式に着用する繊細で色鮮やかな絵柄が格式高い衣装としてふさわしいデザインです。
見た目が豪華な色打掛は白無垢と同等な正礼装とされていますので、ぜひ京友禅の婚礼衣装を着用してみてください。
ハレの席のお出かけに~訪問着、留袖~
京友禅はハレの席のお出かけに着用する訪問着や留袖とも相性がよく、はんなりとした柔らかな印象のコーディネートが楽しめます。
京友禅の特徴である金加工が施された華やかなデザインは、お祝いの席にふさわしく特別な雰囲気を引き立てます。
京友禅の着物を結婚式や披露宴に着用する場合はパステルカラーのような落ち着いた風合いの着物を選びましょう。
友禅を日常的に楽しむなら?
着物を着るにはハードルが高いという方は、友禅を日常的に楽しんでみてはいかがですか。
友禅の小物を生活に取り入れる
身近に友禅を楽しむならポーチや傘など小物を生活に取り入れてみましょう。
友禅の技法を使って作り上げた小物は、縁起のいい古典柄をアレンジした色鮮やかなデザインが日々の暮らしを彩ります。
お土産やプレゼントとしても人気で、ハンカチや手ぬぐいは手に取りやすい値段で販売されているのでお気に入りの友禅小物をぜひ見つけてみてください。
制作体験する
制作体験を通じて伝統的な工芸技術に触れ、友禅の魅力や楽しさを感じてみましょう。
有名な友禅工房は入門コースや本格コースが選べて制作時間30分〜1時間ほどで技法を学びながら、自分だけのオリジナル作品が作れます。
気軽に友禅染が体験でき、歴史や魅力を直接肌で感じられる貴重な時間です。
着用体験する
めったに着物を着る機会がないという方は、友禅着物の着用体験をしてみるのも良いでしょう。
石川県金沢市では加賀友禅の着用体験を行っており、着用後に記念撮影を撮ったり外出してお散歩を楽しんだりできます。
実際購入すると高くて手が出せない友禅ですが、着用体験をして友禅の魅力を肌で感じてみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は京友禅の魅力や特徴・歴史について紹介しました。
金銀糸の刺繍や金銀箔を施した京都らしい華やかな京友禅は、職人がひとつひとつ丁寧に手間暇をかけて作り上げています。
ハレの日に着用するのはもちろんのこと、小物や制作体験など日常でも楽しめますのでぜひ、京友禅に触れてみてください。