着物生地は素材や種類によっておすすめの着用場所や着用時期があります。
この記事では、着物生地を構成する代表的な5つの素材と10種類の生地についてわかりやすく解説し、用途をご説明します。
簡単にチェックできる着物生地リストもご用意していますので、ぜひチェックしてみてください!
着物の代表的な生地素材5選
着物生地を構成する代表的な素材は、絹・麻・木綿・ウール・化繊の5種類です。
これらの素材の特徴が分かれば、着物の用途や管理の仕方などが分かるようになります。
1種類ずつ詳しく見ていきましょう!
絹
生地素材の中で最も使用されるのが絹です。
絹の中でも、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を蚕の繭からとった絹糸で織ったものを「正絹(しょうけん)」といいます。
おすすめの着用時期
一年を通して着用できます。
メリット・デメリット
絹は肌触りが滑らかで着心地の良い素材です。
通気性が良く保温性が高いため、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせます。
着物生地の中で最も格の高い素材であるため、他の素材に比べて高価になるケースが多いです。
注意点
絹は自宅で洗えないため、クリーニングは専門店にお願いしましょう。
また日射しや蛍光灯に焼けて色あせすることがあるので、日傘をさすなどの日焼け対策や保管の仕方に注意が必要です。
織り方の特徴
着物生地には平織、綾織、繻子織(しゅすおり)、からみ織りなど様々な織り方があります。
生活着には平織、斜め模様の入った着心地の良い綾織、フォーマルな場でおすすめの繻子織、夏場におすすめのからみ織りなど、織り方によってそれぞれの特徴があります。
生地の織り方にもこだわることでワンランク上の着物コーディネートを楽しめるでしょう。
麻
植物繊維から作られる麻は「パリッ」とした張りのある着心地が特徴です。
おすすめの着用時期
麻は夏に最適です。
ハリ感があって肌にまとわりつかない上に通気性が良いため、暑い日でも涼しく過ごせます。
長襦袢や帯も麻にすることでいっそう涼しく過ごすことができるでしょう。
メリット・デメリット
麻は通気性・速乾性に優れているため、お手入れがしやすく自宅で洗濯が可能です。
ただし縮みやすいため洗い方には注意が必要です。
注意点
シワがつきやすいため、水スプレーをかけて着物生地を伸ばすなど対処する必要があります。
虫食いにあう可能性もありますので、保管時には防虫対策を行いましょう。
木綿
木綿は綿花を原料とした植物由来の着物生地です。
私たちにとって馴染み深い「浴衣」は主に木綿生地で作られています。
絹よりも重みがあり丈夫であるため、裏地を付けない単衣(ひとえ)で仕立てられることが一般的です。
おすすめの着用時期
通年を通して着用できますが、単衣仕立てのため特に暖かい季節におすすめです。
メリット・デメリット
吸湿性や通気性に優れている木綿は自分で洗濯ができるため扱いやすく生活着としておすすめです。
ただし色落ちや縮む恐れがあるため洗い方には注意が必要です。
注意点
虫食いにあう可能性があるため、保管時には防虫対策を行いましょう。
ウール
ウールは羊毛から作られた保温性の高い、暖かみのある毛織物の着物生地です。
生地が厚く丈夫なので、裏地をつけない単衣仕立てが一般的です。
おすすめの着用時期
ウールは冬の寒い時期におすすめです。
夏用のサマーウールもあるため、冬以外でも肌寒さを感じる際に使用できます。
メリット・デメリット
ウールは汚れがつきにくい、シワになりにくい、自宅で洗濯できるなど、利点が多くお手入れがしやすい素材です。
ただし縮みやすい性質のため、サイズ感が変わってほしくない場合はドライクリーニングに出すなど別の対応が必要です。
注意点
虫食いの被害が出やすいため、保管の際は虫がつかないように一着ずつ分けて収納しましょう。
化繊
ナイロン、レーヨン、アセテートなど化学繊維には様々な種類がありますが、着物生地にはポリエステルの使用が一般的です。
ここではポリエステルの着物生地の特徴について見ていきましょう。
おすすめの着用時期
年間を通して着用できます。
メリット・デメリット
価格が安いにもかかわらず、絹のような見た目で高級感があります。
自宅で洗濯しても天然素材のように縮むことがなく、シワにもなりにくいためお手入れがしやすい素材です。
ただし通気性や吸湿性が悪いため、夏は暑く冬は寒いといったデメリットがあります。
注意点
化学繊維であるポリエステルは静電気が起きやすいため、冬場は注意が必要です。
安価のため手に入れやすい素材ですが、生地が滑りやすいため初心者には着付けが難しく着崩れしやすい素材です。
着物生地の代表的な種類10選
ここでは代表的な着物生地を10種類ほどご紹介します。
種類 | 特徴 | 材質感 | 用途 |
---|---|---|---|
絽(ろ) | ・通気性が良い・透け感がある | 生地の間に隙間がある | ・フォーマルな場・夏場 |
紗(しゃ) | ・通気性が良い・透け感が強い | 絽よりも生地の間の隙間が大きい | ・カジュアルな場からセミフォーマルな場・夏場 |
綸子(りんず) | ・後染め・薄手・絹織物 | ・肌触りが良い・上品な光沢がある | ・フォーマルな場・通年 |
縮緬(ちりめん) | ・後染め・平織・絹織物 | ・凹凸のシボ・厚みがある | ・フォーマルな場からカジュアルな場まで・肌寒い季節向け |
一越縮緬(ひとこしちりめん) | ・上品・格が高い | ・縮緬よりも凹凸のシボが小さい・肌触りが「ざらざら」している | ・フォーマルな場・通年 |
紬(つむぎ) | ・紬糸(つむぎいと)を使用・先染め・丈夫 | ハリがある | ・カジュアルな場・盛夏以外の時期 |
羽二重(はぶたえ) | ・後染め・平織・絹織物 | ・肌触りがなめらか・光沢がある | フォーマルな場 |
袴地(はかまじ) | ・紳士用は正絹が主流・女性用・子ども用は化繊が主流 | ・正絹は滑らかで光沢がある・化繊は肌触りが「つるっ」としている | ・正絹はフォーマルな場・化繊はフォーマルな場からカジュアルな場まで・通年 |
縮み | 麻織物 | シボがある | ・カジュアルな場・夏場 |
上布(じょうふ) | ・苧麻(ちょま)と呼ばれる細い麻糸を使用・平織・麻織物の中で最高級 | 肌触りが「パリッ」としている | ・カジュアルな場・夏場 |
着物の生地によっても格に違いはある?
着物は生地によって格に違いがあります。
素材の特徴を知り、シーンに合わせた着物でおでかけを楽しみましょう。
「絹」は代表的なきもの素材で高級
絹は素材の中で最高ランクに位置します。
正絹は振袖や留袖、訪問着などのフォーマルな着物として式典に使用されます。
一方で小紋や紬などは高級感を醸し出すオシャレ着としてカジュアルな場所で使用します。
ポリエステルでもフォーマルシーンもOKな場合がある
ポリエステルは普段着として使用できるだけでなく、高級感のあるものならフォーマルな場でも使用可能です。
ただし目利きの人は素材がポリエステルだと分かってしまうので、心配な場合は控えた方が良いかもしれません。
基本「絹以外」はカジュアルなシーンで着用する
絹はフォーマルな場、それ以外の素材はカジュアルな場でおでかけを楽しむことができます。
絹以外の素材でブランドになっている高価な生地もありますが、そういった場合もカジュアルな場でのオシャレ着として着用しましょう。
着物生地で最高級品と言われるものは?
絹の中でも「正絹」を使用した生地が最高級品と言われています。
礼装である紋付、留袖、振袖などはすべて正絹が使用されています。
まとめ
着物生地を構成する代表的な5つの素材と10種類の生地についてご紹介しました。
着物生地の中で最高級品の「絹」はフォーマルな場、絹以外の素材はジュアルな場に着用します。
素材や種類の理解を深めて、時節や場にあった着物でのおでかけを楽しみましょう!