下駄というとカランコロンと鳴らして歩く、涼しげな足元から夏の浴衣を連想されるかたが多いかと思います。
でも実は、それはすごく残念な勘違いです。
下駄には沢山の種類があり、様々な装いが楽しめます。下駄のメリット・デメリットから詳しく解説します。
着物に下駄はおかしいの?
涼しげなイメージが強すぎることで下駄は浴衣に合わせるものだと思われがちですが、もちろん着物に合わせることもできます。
おかしくない!メリットはたくさん
下駄にも沢山の種類があり、カランコロンと鳴る天狗が履いているようなものばかりではありません。着物に似合う下駄もあれば、洋服にだって合うものもあります。
下駄を履くことによって得られるメリットまであるんです。
そもそも「下駄」とは?
下駄とは鼻緒があり底部分には「歯」と呼ばれる突起がある履物です。この「歯」の形状によっていくつかの種類に分けられます。
下駄を履くことによるメリット・デメリットもふまえて解説します。
日本の伝統的な履物のひとつ
下駄の歴史は古く、日本へは台湾や中国から伝わったとされています。
最も古いものでは弥生時代までさかのぼります。
日本は高温多湿の国であることから、ぬかるんだ道やあぜ道を歩く際に重宝されていました。
下駄のメリット
とにかく足の健康に良いのが最大のメリットです。
足のトラブルとして一般的な外反母趾や水虫の方も、親指が圧迫されず、通気性が良いことから気持ちよく履くことができます。
また下駄を履いていると、無意識に指や足裏をしっかりと使って歩くため、偏平足や冷え性の予防にも繋がるとされています。
下駄のデメリット
下駄は木製のため、表面がツルリとしています。
そのため重心が前にいきやすく、滑りやすい傾向にあります。
足指に負担がかかるため、鼻緒に接する部分がどうしても痛くなりがちです。
履きこむことで解決しますが、最初のうちは鼻緒をカバーするアイテムや絆創膏を活用すると良いでしょう。
下駄と草履の違いはなに?
どちらも和装に使用される日本伝統の履物ですが、ハッキリとした違いを知っている方はどのくらいいるのでしょうか。
細かな違いを分かりやすく解説します。
大きな違いは「材質」にある
現在の草履は布・ビニール・ウレタン・革などから作られています。
履くとふんわりとしています。
昔はい草やコルクが使われていました。下駄は今も昔も木からできています。
履くと硬く、カランコロンと音が鳴るのは木製であるためです。
この台には柄によっていくつかの種類があります。
底面の形状も注目する
草履の底は平らです。
靴のようにフラットになっていて、歩きやすいものが多く販売されています。
草履の底面には「歯」と呼ばれる突起が付いています。
代表的なのは二枚の歯があるものでしょう。
「歯」は1つだったり2つだったりといくつかの種類があり、それによって名前も異なります。
下駄の種類
女性用の下駄は木製の「台」の柄や素材、「歯」の形状によっていくつかの種類に分けられています。知っていれば用途によって使い分けたり、楽しみかたが広がります。
台の形
駒下駄(こまげた)
下駄と言えば、こちらを思い浮かべるかたが多いかと思います。
二枚の「歯」がある下駄の代表選手です。
男性用は幅広、女性用は細身に作られています。
日和下駄(ひよりげた)
駒下駄に似た二枚歯ですが、台が薄く歯が低い華奢なシルエットになっているのが特徴です。
ぬかるんだ道とは相性が悪いため、主に晴天時に使用されることからこの名前となりました。
右近下駄(うこんげた)
小判型になっているのが特徴の下駄です。
高さがなく厚みがあるため、草履に近い見た目になっています。
安定感があるため、サンダル感覚で履くことができます。
千両下駄(せんりょうげた)
こちらも二枚歯ではありますが、前歯が斜めになっているオシャレな下駄です。
斜めになっていることで踏み出しやすく、別名『のめり』とも呼ばれています。
跡丸下駄(あとまるげた)
二枚歯で斜めになっている点は千両下駄と同じです。
よく似ていますが、後歯のかかと部分が太く、より安定感があります。
女性用は『小町下駄(こまちげた)』とも呼ばれています。
舟形下駄(ふながたげた)
下駄の中で最も草履に近い見た目が特徴です。
歯はなくフラットで小判型になっています。足袋を履いて普段着用の着物と合わせることもできます。
こっぽり
とても高さがある下駄です。
女児や独身女性が晴れ着に合わせて履きます。
現代では厚底スニーカーのように、成人式や卒業式にも履かれることもあります。
素材
鼻緒部分は布や革だけでなく、近年ではポリエステル繊維で作られたものもあります。
下駄の底部分は木が剝き出しだとカランコロンと風情のある音を鳴らしますが、ホテルなど静かな場所でも履けるようにウレタンやゴムが張られたものも出てきました。
木製の台は加工を施すことで、いくつかの種類に分かれます。
白木(しらき)
なにも加工をしていない桐や杉など素材の木目を活かした状態のもの。
塗り
黒色や朱色の漆塗り塗装です。
焼き
表面を焼き、木目をより強調したもの。
表付き(おもてつき)
表面に竹皮を編んで作られた畳表を張り付けたもの。
正装向きです。
鎌倉掘り(かまくらぼり)
表面に「寅」や「花」など柄を彫り、漆塗りで仕上げたもの。
桜張り(さくらばり)
秋田の伝統工芸。桜皮細工を表面に張ったもの。
竹張り(たけばり)
胡麻竹を表面に張ったもの。ひんやりとしていて夏向きです。
下駄と相性の良い服とは?
下駄には「コレ!」と決まった衣類があるわけではありません。
意外と自由に楽しんでも良いもの。知らないと勿体ない、下駄と衣類の組み合わせや履く際のルールをお教えします。
浴衣
下駄と浴衣は定番中の定番。基本的に素足で履きます。
着物
浴衣のイメージが強すぎて、着物では履いていけないものだと思われていますが、そうではありません。着物を合わせる時には、足袋を履くと良いでしょう。カジュアルな装いと相性バツグンです。
洋服
下駄はなにも和装だけのものではありません。
近年では洋服に合わせたサンダルに似たデザインの下駄も販売されています。
もちろん一般的な下駄も、洋服と合わせて楽しむことができます。
ジーンズやロングスカートと合わせれば、夏場は特に見た目にも涼しげな装いの完成です。
下駄はどんな場面でも履いても良い?
ここまでくるといつでも下駄を履いてOKだと思ってしまいますが、少しだけ注意が必要です。
マナー違反にならないよう、ポイントやルールをおさえておきましょう。
普段着なら着物でもOK
下駄は着物と合わせても、もちろんOKですが、あくまでも普段着用です。
近所へのお買い物、仲の良いお友達や家族と軽くランチ、といったカジュアルな場面で履くのが一般的です。
フォーマルな場面では草履
結婚式やホテルでの会食など、フォーマルな場面では下駄はNGです。
下駄ではカジュアル過ぎるため、ヒールが高い草履を履きましょう。
まとめ
下駄は木製のため、雨に弱い草履よりも雨の日に向いています。
指先を覆うように保護してくれる爪革を付ければ、雪が降っている日でも安心です。
足袋や爪革を活用すれば一年中履けるので、普段着用の着物とも合わせて足指の健康のためにもどんどん履いてください。