和服においての男女の違いはどこにあるのか。
種類・衿・仕立て・着付けの4つのポイントに着目して、違いの理由などを分かりやすく解説していきます。
男女の着物の違いとは
男性と女性では体型も違い、着物の歴史も異なるため、作りや着付け方も変わってきます。
男女の着物の違いがどこにあるのかを、着物の歴史や理由なども絡めてご紹介します。
種類・衿・着付け・仕立ての4つが違う
男性用の着物と女性用の着物で大きく異なる点は4つ。
・種類の数
・衿の形
・着付け方
・仕立て方
それぞれの項目でどこがどう違うのか、なぜ違うのかについて、分かりやすく説明していきますので参考にしてください。
【種類】男女の着物の違い
男女の着物の種類の違いについて、種類の数がどれほど違うかを詳しくみていきましょう。
男性は2種類・女性は8種類
男性用の着物の種類は、大きく分けると以下の2種類になります。
- 礼装着
- 外出着
男性は明治時代からの文明開化の影響で、戦後になるとビジネスシーンでスーツを着用する機会が増えました。
そのため、フォーマルなシーンとプライベートでの外出着などの限られた場面でしか着物を着用する機会がなくなり、2種類になったと考えられています。
一方で、女性用の着物の種類は、8種類に大別できます。
- 留袖
- 振袖
- 訪問着
- 付け下げ
- 色無地
- 小紋
- 紬
- 浴衣
女性にも近代化の波が押し寄せましたが、男性に比べると社会進出が進んでおらず、高度経済成長を遂げる昭和期後半までは和装が一般的でした。
女性はさまざまなシーンに応じて着物を使い分ける必要があり、男性よりも圧倒的に多い8種類もの着物が定着しています。
女性の着物は鮮やかな色合いや柄を取り入れた華やかな雰囲気のものが多いですが、男性の着物は基本的に無地が多いのも、大きな特徴です。
帯は男性が2種類・女性が4種類
帯については男性は2種類。
・角帯
・兵児帯
女性は4種類あります。
・丸帯
・袋帯
・名古屋帯
・半幅帯
女性に比べると男性の着物の種類が少ないのに伴って、帯も男性の方が少なくなっています。
帯の幅についても男女では異なり、男性の方が幅のせまい細めの帯を使うことがほとんどです。
帯の結び方も女性の場合は振袖・着物・浴衣によって変わり、華やかなものからシンプルなものまで数多くありますが、男性の場合は片ばさみや貝の口など種類が少なくなっています。
男性と女性の着物と帯まとめ一覧表
男性と女性の着物と帯それぞれに種類と格があり、合わせ方やどんなシーンにどの着物を着るかが重要です。
着物の格や適した帯、着用シーンについて、見やすいよう一覧表にまとめました。
男性の着物と帯 | |||
格 | 着物の種類 | 適した帯 | 着用シーン |
礼装着 | 黒羽二重五つ紋付色紋付お召一つ紋付 | 角帯 | 新郎・新郎父・親族の結婚式・成人式・祝賀会・授賞式・お茶会など |
外出着 | 紬(アンサンブル)ウール(アンサンブル) | 兵児帯 | 観劇・パーティー・食事会・買い物など |
女性の着物と帯 | |||
格 | 着物の種類 | 適した帯 | 着用シーン |
礼 装 | 留袖 | 丸帯・袋帯 | 五つ紋なら親族の結婚式三つ紋以下なら子どもの入学式・卒業式・パーティーなど |
振袖 | 袋帯 | 成人式・結婚式・お茶会など | |
準礼装 | 訪問着 | 袋帯 | 結婚式・お見合い・パーティー・お茶会など |
付け下げ | 袋帯・名古屋帯 | 友人参加の結婚式・お茶会・パーティーなど | |
色無地(紋付) | 三つ紋以上なら袋帯一つ紋なら名古屋帯 | 披露宴・お茶会・七五三・入学式や卒業式への参加など | |
普段着 | 小紋 | 名古屋帯・半巾帯 | お茶会・食事会・お稽古など |
紬 | 名古屋帯・半巾帯 | カジュアルなパーティー・買い物・お稽古など | |
浴衣 | 半巾帯 | 夏祭り・花火大会・部屋着など |
※着物の格は紋の数によって変わる場合があります。
【衿の形】男女の着物の違い
続いてご紹介する男女の着物の違いは、衿の形になります。
女性は「広衿」「バチ衿」・男性は「棒衿」
女性の衿は「広衿」か「バチ衿」が主で、男物の衿は「棒衿」が一般的になります。
それぞれの違いについて説明していきます。
広衿とは?
衿幅を2倍と広めに仕立てた衿のことで、女性の着物に多く用いられています。
着付けの際に自分の好きな幅に折って着られる点や、着崩れがしづらく胸元がはだけにくい点が利点です。
バチ衿とは?
あらかじめ半分に折った状態で縫い留めてある衿のことです。
衣紋の部分が約5.5cmで、衿先が約7.5cmほどと衿先に向かって幅が広がるつくりになっていて、三味線を弾く際に用いるバチと形が似ていることから名づけられました。
主に女性用のカジュアルな着物や浴衣に使用されます。
棒衿とは?
バチ衿と同様に、あらかじめ二つ折りの状態で縫い留めてある衿のことで、衣紋から衿先まで幅がまっすぐ同じなのが特徴です。
主に男性用の着物と子ども用の着物に用いられます。
【仕立て】男女の着物の違い
つぎに、男女の着物の仕立ての違いについて、詳しくみていきましょう。
身八つ口は女性にしかない
女物の着物にあって男物の着物にはないのが、身八つ口です。
身八つ口とは脇の下にある開いている部分のこと。
身八つ口が作られるようになったのは江戸時代になってからで、元々は衿・左右の袖口・左右の振り口・左右の脇の開き口・裾といった八つの開き(口)に由来しています。
江戸時代以前は女性も帯を現在よりも低めの腰辺りで巻いていましたが、江戸時代以降は帯を巻く位置が高くなり、帯の幅も広くなりました。
その影響から上半身を動かしづらくなったため、問題点を解消するために身八つ口が生まれたのだとか。
体型によるずれを調整しやすくし、上半身を楽に動かせるマチのような役割を果たしています。
【着付け】男女の着物の違い
男女の着物の着付け方の違いとは、衣紋の抜き方と帯の高さ、おはしょりの有無といった着物を綺麗に着るためのコツとなる3つのポイントに注目して、ご紹介します。
衣紋の抜き方
衣紋を抜くとは、衿を背中の方に引いて着ることで、男性の場合は衣紋を抜かずに、女性の場合は衣紋を抜くのが通常です。ただ、体型や年齢、礼装か普段着かによっても衣紋の抜き方は変わってきます。女性は衣紋を抜いてうなじをみせることで、色っぽさが増します。
帯の位置
男性に比べると女性の方が帯の位置は高い傾向にあります。女性の場合は、年齢が若いほど帯を締める位置が高く、年齢が上がるほど帯の位置は下がりがちです。女性は胸のすぐ下の胴回りを、男性は腰回りを目安にするとよいでしょう。
おはしょりの有無
おはしょりとは、帯の下にある着物を折り畳んだ部分のことで、女性の着付けには必要ですが、男性の着付けには必要ありません。着物をそのまま着る時には丈が合わなかったり、胸元のシワが気になったりする場合があります。それを防ぐためにあるのがおはしょりで、着物の着丈を調整したり、胸元のシワを防いだりでき、腰周りをすっきりと見せられます。
男性の着物は左前・右前どっち?
洋服の場合ですと、男性は右前が、女性は左前が基本です。
しかし、着物の場合は左前・右前どちらに着るべきか、基本の着こなし方について説明していきます。
女物も男物も右前に着付けるのが基本
昔から、着物を左前に着ると縁起が悪いと考えられています。
そのため、着物の場合は男女ともに右前に着付けるのが正しい着方になります。
ちなみにここでいう右前とは、着ている人から見て右側の襟元が内側にきている状態を指します。
和装の左前が縁起が悪いとされる理由
和装を左前で着ることは、亡くなった方が身に着ける「死装束」を連想させることから縁起が悪いとされています。
奈良時代にあたる719年に制定された法令によって着物を右前に着る習慣が生まれたとの説があり、それ以降右前が一般的になったと考えられています。
「死装束」は、死者と生者を区別したり、中国の左が上位との思想の影響を受けたりした結果、死者は仏に近づくという考え方に基づいて左前に決まったのだとか。
着物を左前に着るとマナー違反になりますので、着付けの際には十分に注意が必要です。
まとめ
男女の着物には幾つかの違いがあるため、着物に慣れていないと迷うことがあるかもしれませんが、種類の数と衿の形、着付け方、仕立て方という4つのポイントを押さえておけば安心です。
男女の着物の違いやマナーを理解した上で、自分なりのおしゃれな着物コーデを楽しんでください。